2025/09/23 01:38
【永久保存版】
〜木材、鏡面仕上げのセカイ〜
※これから書きまとめるのはあくまで僕なりの見解ですので他者の感性を否定するものではありません。
☆チャプター1『鏡面に対する考え方』
まず大前提として……"何でもかんでも鏡面にすれば良いわけではない"です!
それぞれの木材にはそれぞれ似合う仕上げがあり、必ずしも鏡面加工が1番美しいとは限りません。
磨き上げなければ見えてこない木目や杢目を引き出すことこそ、鏡面仕上げのネライです。手触りや色味、経年変化の具合を考え、理想とするタイミングで使えば良い技こそが鏡面仕上げなのです。
☆チャプター2『鏡面仕上げの価値』
今回はペン置きを例に上げますが、側面の2面を鏡面に仕上げようと思うと完成までに2時間は磨かなくてはいけません。通常の何倍も時間とヤスリが必要になるので、当然売るとなれば値段が上がります。
しかし、その価値を楽しめるのはほんの一部の木材好きだけで、労力にあった値付けに納得してくださる方は限りなく少ないです。斬新なデザイン、派手な色味、求めやすい値段に対し、鏡面加工というカードはあまりにもパンチが無いのです……。
つまり、鏡面加工は玄人向け。完全な嗜好品向けというわけです。それが一般向けの販売(木材好きや文房具好き向けではなく)となればなおさら顕著で、寄せ木やスタビ材……他ジャンルですがレジンともなれば太刀打ちできません。
それでも。商売ではなく木を楽しむ僕らにとって鏡面加工は浪漫なんです。それだけでたまらなく価値がある、ワクワクする領域なんです。
☆チャプター3『鏡面仕上げのやり方』
簡単に言えば"ひたすらヤスリがけする"です。
問題はその過程です。
早速必要なものの話しをしたいところですが、まぁ焦らず。
まずは"ヤスリがけ"とはなんぞやというところから。
そもそもヤスリがけとは砂やガラス粒子など(研磨剤)を付着させたペーパーで対象の表面を削り整える行為です。研磨剤の密度が高いほど番手と呼ばれる数字が大きくなっていきます。(例……粗い>細かい-120番>400番)今回は対象を木材に、ペーパーは一般に紙ヤスリと呼ばれるものを基準に説明していきます。
木材がヤスリがけで整っていく仕組みです。
研磨剤となる粒子と木材がこすれ合い、ささくれのような物が出来ていき(表面が毛羽立つ)そのささくれを研磨剤が掻き取っていくことで徐々に表面が平らになる。木材に触れる粒子を小さく細かく、密度を高くすること(俗に番手を上げるという)でさらに表面を滑らかにしていく。
かなり簡単にしたつもりですが、これがヤスリがけの仕組みです。つまりヤスリがけとは"木材を傷つける行為"なわけです。この傷を違和感のないラインまで細かくしていくと仕上がりの良い滑らかな手触りの表面になるわけです。
しかし、ここで皆さんに疑問に感じてほしいのが"毛羽立ち"です。ここからはもう少し具体的に説明していきます。
例えば240番でヤスリがけした表面です。触るとサラサラしていて粉っぽさを感じるようなイメージです。このあたりでは、ヤスリを触ってみてもザラザラとしていて肌が少し痛いと感じる粗さです。
対して2000番までヤスリがけした表面はというと、オイルなどが無くてもスベスベしていて光沢を帯び、ツヤツヤした表面になります。ヤスリを触ってみてもツルツルしており、肌に当てても全く痛くありません。
そうですね。みなさんもご存知の通り、番手を上げれば上げるだけ滑らかになっていくんです。ヤスリも滑らかな表面になっていき、木材の表面を削る力も弱くなっていきます。2000番までくると目に見える削り屑は殆ど出ません。
ここで疑問なのが"毛羽立ち"です。
"表面が鏡のようになる"ということは、表面がほぼ真っ平らになったと言い換えることもできます。毛羽立ちがあったら真っ平らとは言えませんよね?それほど削る力のないヤスリで、真っ平らになるまで表面を整えることは可能なのでしょうか……。粗い番手からコツコツと時間を掛けて磨いてきた木の表面。本当に"真っ平ら"ですか……?
あなたの磨いた表面、手で触ったりすると艶が消えたりしませんか???
ここに僕なりの鏡面仕上げの根本となる考え方が隠されています。
ずばり言います。
ただ番手を上げて磨いてきたその表面……"毛羽が寝ているだけ"の可能性があります。
ヤスリの番手を上げていくと、当然削る力は弱くなり、もっと繊細に表面をなぞれるようになります。一定まで番手を上げると、毛羽立った表面をなでて寝かせて"真っ平ら"にしているだけでは無いかということです。
寝かせているだけの鏡面だと仮定すると触って艶がなくなる説明もつきます。簡単に言うと寝ていた毛羽がふたたび何らかの原因で立つと艶がなくなるわけです。よく、使い古したペーパーで磨くと表面が滑らかになるからといって、同じペーパーをやたらと大切に保管することがありますが、用は研磨力がなくなって毛羽を寝かせるのにもってこいなペーパーというわけですね(そういうペーパーが欲しい時があるのも事実)
ではこれをどうやって対策するか。
ここで出てくるのが水研ぎです。
水研ぎと言っても、木材を水浸しにしながら耐水ヤスリで磨いていくことではありません。(木材は水で伸縮する素材なので、極力水には触れさせたくない)
"表面だけ湿らせて、水分の蒸発で寝てしまった毛羽を再び立たせる"ものです。
順に番手を上げ、400番で仕上げとした木材の表面と、同じように400番まで磨き、軽く霧吹きで湿らせ乾燥させて毛羽立たせ、もう一度400番で軽く磨いた木材の表面とでは既に違いが見え始めます。
毛羽を立たせて再び磨く。これをこまめに繰り返していくと、2000番程度で十分なほど鏡面に仕上がります。
こうやって仕上げると、なんちゃって真っ平らではなく、しっかりとした真っ平らを作りやすくなります。極限まで毛羽を掻き取れているため、手で触ったり湿度で毛羽がたったりして艶がなくなることが少なくなります。
長くなりましたが、これが(艶を長持ちさせる)僕なりの鏡面仕上げのトリックです。こだわればもっと細かな注意点やポイントありますがキリが無いですし、自分で開拓していく楽しみもありますのでこれくらいで。
これだけ熱心に説明しましたが、結局は材にあった仕上げが一番です。何でも鏡面にすれば良いわけではないと思うんです。手触りさらさらも木材の特徴ですし、光を程よく吸収してくれるのも木材の良いところです。適材適所、適材適仕上げです!
鏡面仕上げは寄せ木やらスタビやウッドレジンに比べれば魅力に欠けます。到底叶いません。
……でも。あの自分にしか作れないものを作っている感!自分がこの世界を生み出したんだ感!想像もしない光景を目の当たりにしたワクワクドキドキ感!それを忘れてしまったらクリエイターとしての歩みは止まると思うんです!
小さかったあの頃、初めてモンハンをやったときのような!初めてジュラシック・パークを見たときのようなワクワクドキドキ感!!
少年のようなウブな瞳で創作に心震わせ、震わされる。そんな瞬間を楽しめるみなさんを僕は同士だと思っています!!
長文読んでいただきありがとうございました!!!!!
以上!解散!